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2016-06

霊園からのワタルの電話。 - 2016.06.11 Sat

*ワタルは3月に養護学校高等部を卒業しました。4月からはそれまで利用していた放課後等ディサービスは使えなくなり、通所先から4時くらいに帰宅した後、ほぼ毎日ひとりで色々なところに散歩しているようです・・・。どうしよ。

 先週のことです。仕事帰りに病院に寄り、リュウの夕飯が終わってから一階に散歩に行き、ロビーのソファーに座ってちょっと経った時です。7時は過ぎていました。
 ワタルから電話が鳴りました。

「もしもし?」
「ワタルです。S霊園にいるので迎えて来てください」

とのことでした。

(???・・・。・・・。???。霊園?)

「リュウ、いまワタルから電話が来て、S霊園に迎えて来てって。この前、リュウのお母さんの納骨に行ったばかりだよね。今日は平日で通所の日だから、それが終わって家に帰ってから歩いて出かけたんだわ。もう暗くなるから迎えに行くから、リュウベッドに戻ろう」

 リュウにそう言って私たちは二階に上がり、リュウはベッドに横になりました。口の中をきれいにしていなかったのと、連絡帳の記入がまだだったので、それらをやっていたら、薄暗かった外がもっと暗くなってきました。やっと病院を出られるようになったのは、7時半くらいです。急いで車でS霊園に向かいました。S霊園は病院から近くです。でも家から歩くと片道1時間くらいでしょうか。

 (ワタルはど・こ・に、いるんだろう?霊園の入口かな?)

 そう思って霊園の入口に行くといません。仕方なく霊園の中に車で入って行きました。もう暗いです。この頃の日没時間は7時15分くらいです。

 (管理棟の近くかな?)

 そう思って管理棟の近くに行きましたがいません。

 (ま、まさか、おじいちゃん、おばあちゃんのお墓の前にいるの???もう日も暮れているのに?)

 霊園の中に行くのは怖くて、その想像だけは避けたかったのですが、仕方なく車で行ってみることにしました。

 と・こ・ろ・が、だ~~れもいません。おじいちゃん、おばあちゃんが眠っているお墓は車の中から薄暗い中、見えました。

 私は園内の通路に車を停めています。右も、左も、後ろも、前も、お墓だらけです。もう暗くて、電気も点いていないし、人影もありません。

(ワタルは、霊園のどこにいるんだろ?夜の霊園なんて、私は生まれて初めて来た。ワタルは怖くないの?)

 そう思いながらワタルに電話しました。コール音が鳴り始めました。

 一回、二回、三回、四回・・・、いつもはこれくらいで出てくれるのですが、出てくれません・・・。

(ワタルは、この暗いお墓だらけの霊園のどこにいるのぉ!)

 そう思った時です。運転席の真後ろのドアが、突然ガバァッ〜!っと開きました。一番視界に入らないドアです。私は恐怖で、

「うわぁあああああ〜〜〜〜」

と叫んでいました。でも叫びながら後ろを振り向いてワタルを確認すると咄嗟に、

(ワタルはお墓が怖いものだとは思っていないようだから、ここで怯えてはいけない)

と思い、

「うわぁああああああっはっはっはぁああああ〜〜〜〜〜〜!」

と叫び声の後半に笑い声を付け加えました。車に乗り込んだワタルが、

「お母さん、ただいま。お母さん笑ってたの?」

とワタルが不思議そうに楽しそうに言いました。そして、

「黒い看板が見たくて来た」

と霊園に来た理由を言いました。

 黒い看板とは、亡くなった人を書いてあるお墓の横に建っている霊票(墓標)のことです。ワタルはデザイン的に気に入って、また見に来たようでした。

「そ、そうなんだね・・・」

 多分、もうここには一人で来ないでしょう。満足したでしょう。

 私はそう自分に言い聞かせました。






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プロフィール

vanilla

Author:vanilla
「やさしいまなざし」は「Vanilla Web Site」の日記の部分です。

登場人物(平成28年11月現在)
 
佐藤リュウ(59歳)←夫
佐藤バニラ(永遠の20歳)←私
佐藤イブキ(社会人)←長男
佐藤ワタル(福祉施設通所)←次男

 夫佐藤リュウは、平成17年頃(48歳)より、物が二重に見える、手に力が入らない、全身が重苦しく感じる症状があり、会社勤務ができなくなりました。
 若年性のパーキンソン病の疑いとのことで、平成18年(49歳)より神経内科に通院し、平成19年にはパーキンソン病関連疾患と診断名が付きました。
 その後、平成22年 (52歳)、診断名が若年性の「進行性核上性麻痺」に変わりました。
 ずっと自宅より通院していましたが、平成24年4月に自宅外で転倒骨折し、手術入院となってしまいました。入院時、誤嚥性と思われる肺炎も併発していて、現在も入院中です。平成26年11月19日に胃瘻造設しました。
 夫が仕事ができなくなった平成17年時、上の子が小学校6年生、下の子が小学校2年生(多動と自閉で特別支援学級在籍)でした。
 私は、平成19年より、平日フルタイムで仕事しています。たくさんの方のお力をお借りし、生活しています。
 北海道在住です。

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