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2020-02

手をしばるヒモとふんどし #リュウ9 - 2012.07.16 Mon

 入院の時、生命の危険を回避するためにからだを拘束することがあるという説明があり、了承しました。家族が面会に来た時は、外していいそうです。
 リュウは、鼻からくだを付けていて、流動食をする時は、かならず、白いヒモで手がベッドに固定されていました。誤ってくだをさわってしまって、肺に流動食が流れたら、肺炎になってしまいます。肺炎を治療しているのに、本末転倒です。
 入院して最初の二ヶ月くらい、私が会社帰り、お見舞いに行くと、ちょうど夕飯の流動食の時間で、白いヒモで固定されているので、行くとすぐ外しました。
 部屋に看護師さんがいても、構わず黙々と外します。ちょっと複雑なしばり方で、しばるのに時間がかかっていて、今しばったばかりかもしれませんが、病室に入って行ったら、黙々と外しました。
 納得していても、自分の家族が、白いヒモで固定されている姿を見て、喜ぶ人はいないのではないかと思いました。
 でも、看護する人は、家族に嫌と思われようが、生命の危険から患者を守らなければなりません。
 白いヒモをめぐって、家族と看護する側に、見えないわだかまりがあるように、感じました。
 ある日、いつものように病室に入って行って、いつものように黙々とヒモを外していると、病室にいた看護師さんが、私の行動に気づいて、

「あ、外していただいて、ありがとうございます!」

と、明るい口調で、感謝されました。

(あれ?感謝されちゃった)

と、ちょっと驚き、黙礼をしました。

 そして、なぜ感謝されたのだろうと考えました。
 行き着いたところは、病院側は、患者の家族の気持ちは、もうじゅうにぶんにわかっているということです。
 1対1で看ているわけにもいかないし、他に方法はないし、その上でしばらなくてはならない。しばらなくてもいい状況であればしばらいでいてあげたい、ということ。
 そして、いつも、そういう気持ちで、患者や家族に、接しているということです。
 その看護師さんに明るく感謝されたことに、私はまたひとつ、気づかされたような気持ちがしました。

 さて、リュウは、3階に移ってからというもの、3食食堂で食べてるし、白いヒモのお世話になることはありませんでした。ある日、病室にいると、リュウのテレビ台の上に、4階で見た手をしばる白いヒモが乗っているではありませんか。私は、

「あれ!どうしてここに、このヒモがあるんだろう!」

と、びっくりして、手に持ち、リュウにも見せました。リュウは、何も言いません。

「このヒモ、なにかわかる?リュウ?」

と、リュウの顔の前に持って行って、あらためて聞くと、

「・・・。ふんどしにみえる・・・」

と、言いました。私は、それを聞いて、急にからだの力が抜け、可笑しくなりました。

「フンドシ?リュウ、真面目に言ってるの?」

「・・・うん・・・」

 4階での大部屋で、必要な患者がみな手をしばられてる光景が目に浮かび、あれは、実はフンドシだったかと思うと、可笑しくて笑いました。
 あまりに可笑しくて、この時リュウの表情が、キョトンとしていたのか、ほほ笑んでいたのか、確認できませんでした。
 でも、次に、そういう時があっても、リュウのせりふを思い出し、心が軽くなることは、間違いありません。
 ありがとう、リュウ。




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プロフィール

vanilla

Author:vanilla
「やさしいまなざし」は「Vanilla Web Site」の日記の部分です。

登場人物(平成28年11月現在)
 
佐藤リュウ(59歳)←夫
佐藤バニラ(永遠の20歳)←私
佐藤イブキ(社会人)←長男
佐藤ワタル(福祉施設通所)←次男

 夫佐藤リュウは、平成17年頃(48歳)より、物が二重に見える、手に力が入らない、全身が重苦しく感じる症状があり、会社勤務ができなくなりました。
 若年性のパーキンソン病の疑いとのことで、平成18年(49歳)より神経内科に通院し、平成19年にはパーキンソン病関連疾患と診断名が付きました。
 その後、平成22年 (52歳)、診断名が若年性の「進行性核上性麻痺」に変わりました。
 ずっと自宅より通院していましたが、平成24年4月に自宅外で転倒骨折し、手術入院となってしまいました。入院時、誤嚥性と思われる肺炎も併発していて、現在も入院中です。平成26年11月19日に胃瘻造設しました。
 夫が仕事ができなくなった平成17年時、上の子が小学校6年生、下の子が小学校2年生(多動と自閉で特別支援学級在籍)でした。
 私は、平成19年より、平日フルタイムで仕事しています。たくさんの方のお力をお借りし、生活しています。
 北海道在住です。

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