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2020-02

ぎんさんの「おかえり」 #リュウ29 - 2012.10.08 Mon

 ディルームの食事のメンバーですが、先輩女性患者の「きんさん」「ぎんさん」、I夫妻と私たちが、定着しています。
 あと、男性患者さん、「私!今日からここで食べる!」と宣言した女性患者さんもいましたが、退院しました。
 でもいま、他にも増えたりしています。

 M病院は、内科や整形外科もあり、いろんな患者さんがいます。S病院は、あたまの病院専門でした。でも、S病院もM病院も、患者さんのことは、私は、わかりません。夫の病気しか、わからないのです。つまり、その人が、どういう病気で入院しているのか、私には、ぜんぜんわからないのです。

 M病院での、最初の頃のお話しです。
 ディルームで、きんさん、ぎんさんに会い、食事をしているとき、ぎんさんがリュウと私の方に向かって、

「おにいさん、おにいさん!」

と言います。私は、キョロキョロしましたが、そこにはリュウと私しかいません。リュウが「おにいさん」と呼ばれることはないと思いました。気のせいかなと思い、だまって食事を続けていると、やっぱり、

「おにいさん!おにいさん!」

と何回もこっちの方に向かって、呼びます。あれ?と思い、ぎんさんを見てみると、ぎんさんは、リュウではなくて、私を見ています。

(あ!私に向かって、呼んでいる!)

とそのとき、思いました。今までも、「娘さん」「お嫁さん」とは呼ばれたことがあるけど、「おにいさん」とは、性別まで間違われたのかと思いました。リュウは、私の兄さん?兄弟がイスに並んで座っているように、見えたのでしょうか。私は、立場を間違われて呼ばれた際、否定する時と、しない時がありますが、今ここで否定しなければ、今後私は、男の人のような立ち振る舞いをしなければいけません。さすがにそれはないと思い、

「おにいさんじゃないです、おにいさんはいませんよ〜」

と答えました。
 私は、髪は短めで、Tシャツにジーパンの格好をしていたのですが、これだと、男の人に見られることもあるのかと、深く考えました。でも「おじさん」とは、言われませんでした。

 そういえば・・・、と、また、前の入院先のS病院のことでのことを思い出しました。

 4階に入院していた時、リュウの向かいに、サンダーバードのスコットに似た人が入院してきました。リュウが、

「どうしてここにサンダーバードのスコットがいるんだ!」

と指を差して大きな声で言った時は、リュウの口をふさごうかと思いました。
 そのスコットさんが私に向かって、ある日、

「どこの大学ですか?」

と聞いてきたのです。私は、その意味がよくわかませんでした。大学で働いているとも言ったことないし、大学という単語も、スコットさんの前では、発したことないはずです。しばらくその意味を考え、「あ!」とわかりました。

(この人、私を大学生だと勘違いしているんだ!)

 その途端、私はこんにゃくのようにからだをくねくねさせ、

「あの〜〜〜、私は、大学生じゃないです・・・」

とにやにやしながら言うと、

「あ〜、そうですか」

とスコットさんは無表情で答えました。私はクルッとリュウの方を向き、リュウに、

「リュウ!いま、私、大学生に間違われたよ!」

と言いましたが、リュウは、目は開いて天井を見つめていますが、無反応です。私はその嬉しさをどうしても伝えたくて、

「リュウ!リュウ!」

とからだを揺すりましたが、やはり、無反応でした。

 S病院の4階で、そういうこともあったのです。
 医療・福祉・患者さんの家族、患者さんから、私は、いろいろな呼び方をされています。

 話しは、ぎんさんに戻り、ある日、

「誰か〜、この人に、何か買ってあげてちょうだい、お金払いますから」

と、言いました。「この人」とは、私のことです。私は、リュウが食べている横にだまって座っているだけなので、かわいそうと思ったみたいです。たぶん私が、お腹空いているのに、なにもあたっていないで、他の人が食べているのを、指をくわえて見ているだけと、目に映ったのでしょう。やさしいぎんさん。でも、私っていったい・・・。

 そのぎんさんが、9月のある日の夕食時、いつものようにリュウの食事を手助けをしようとディルームに入って来た私を見て、

「あ〜、おかえり」

とごく自然に言いました。

(あれ?いま、私におかえり?って言った?リュウには言われるけど、他の人に言われたのははじめて・・・)

と、ちょっとびっくりしながら、

「ただいま・・・」

とぎんさんに合わせて、言いました。

 今のところ、その一回きりですが、ぎんさんの「おかえり」を聞いて、考えました。

 自分の家だけではなく、職場、病院や施設でのあいさつ、「ただいま」「おかえり」「いってきます」「いってらっしゃい」が、いろいろな立場の人のあいだで、増えたらちょっとステキかも。




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プロフィール

vanilla

Author:vanilla
「やさしいまなざし」は「Vanilla Web Site」の日記の部分です。

登場人物(平成28年11月現在)
 
佐藤リュウ(59歳)←夫
佐藤バニラ(永遠の20歳)←私
佐藤イブキ(社会人)←長男
佐藤ワタル(福祉施設通所)←次男

 夫佐藤リュウは、平成17年頃(48歳)より、物が二重に見える、手に力が入らない、全身が重苦しく感じる症状があり、会社勤務ができなくなりました。
 若年性のパーキンソン病の疑いとのことで、平成18年(49歳)より神経内科に通院し、平成19年にはパーキンソン病関連疾患と診断名が付きました。
 その後、平成22年 (52歳)、診断名が若年性の「進行性核上性麻痺」に変わりました。
 ずっと自宅より通院していましたが、平成24年4月に自宅外で転倒骨折し、手術入院となってしまいました。入院時、誤嚥性と思われる肺炎も併発していて、現在も入院中です。平成26年11月19日に胃瘻造設しました。
 夫が仕事ができなくなった平成17年時、上の子が小学校6年生、下の子が小学校2年生(多動と自閉で特別支援学級在籍)でした。
 私は、平成19年より、平日フルタイムで仕事しています。たくさんの方のお力をお借りし、生活しています。
 北海道在住です。

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