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2020-07

河野先生の進行性核上性麻痺の具体的な治療方法。 - 2015.10.25 Sun

 昨日書いた「コウノメソッド」の進行性核上性麻痺の治療方法が、私の文中で大まかすぎるかなと思ったので、リンクは貼っていた「ドクターコウノの認知症ブログPSP特集」から該当部分を転載します。

26.9.22号掲載 
コウノ・エンサクロペデイア PSPの巻(抜粋)

歴史的背景 
PSPは、1964年にSteeleらが報告した神経変性疾患です。5:2で男性に多く、認知症の付随は必発です。認知症のタイプは皮質下性であり、でまかせ応答でなく長考します。そこはピック病とまったく異なりパーキンソン認知症(PDD)に近いです。

初期症状
初発症状は歩行障害が多いですが、皮質下認知症、人格変化で発症することもありますから認知症外来に初期のPSPが来る可能性があります。 カーテイスがPick complexの一つに入れた理由は、ピック症状(多幸的、易怒、無関心、二度童)があり前頭葉萎縮や前頭葉血流低下を伴うからでしょう。

一方パーキンソン病類縁疾患と考えられる理由は、錐体外路症状があるからです。筋固縮(とくに頚部、体幹)、嚥下障害、歩行障害の姿がPDに似ています。しかしPDと診断されたものの、PD治療薬が効かない患者が来たら、それだけでPSPを疑いはじめるべきです。

パーキンソン病との相違点
PDと異なる点は、安静時振戦は少なく、筋固縮が四肢にはめだたないため歯車現象は陰性に近く、アームスイングもあることです。この歩き方でPDとDLBではないと気づかないといけないでしょう。

姿勢反射障害は高度で、診察室で普通に歩くようにみえますが家族に聞くと後方に突然倒れる、それを繰り返すと言うはずです。そうなるとPSPは確定的です。

さらに眼球が上下に動かない(垂直性注視麻痺)ことを確認してください。足元を見ないで歩く患者が多く、目が固まっている、まばたきしないという印象が強いです。目に異常性を感じたらCBDでなくPSPです。

仮性球麻痺として構音障害が初期から出ますから、復唱などをさせたときに声が曇っていて遅いしゃべり方であることに気づきましょう。PDやDLBは声が小さいですがクリアです。

失語、失行があればCBDのほうを疑いましょう。つまり臨床的に復唱困難があり進行性非流暢性失語(PNFA)であるならば、病理はPSPよりもCBDのことが多いと言うことです。

PSPの画像所見
画像では、初期には軽度の脳幹萎縮が認められるか、ほとんど正常にしか見えません。進行すると脳幹、とくに中脳被蓋の萎縮(ハミングバードサイン)が特徴的です。側脳室が拡大していないのに第三脳室が拡大するのはPSPの非常に大事なヒントになります。

前頭葉萎縮が強い患者もいます。SPECTでは前頭葉血流低下が検出され、MIBG心筋シンチのH/M比は正常です。大脳萎縮は軽いと言われてきましたが、グリア細胞へのリン酸化タウの蓄積が大脳皮質に広範に認められることから、本症では大脳皮質そのものも障害されると理解されるようになってきました(新井)。

PSPのバリエーション
PSPには典型例と非典型例があります。頻度は典型例(RS)54%、非典型例の大多数を占めるパーキンソンタイプ(PSP-P)32%とされます(Williams)。ここでは、RS, PSP-P, PSP-PAGFの3型について紹介しましょう。

PSP典型例(リチャードソン症候群、RS)
PSPの典型例は、初期から転倒しやすく、垂直性注視麻痺、認知症などを特徴とします。パーキンソン病のように、肘を曲げていたり前傾姿勢でもなく、小刻み歩行、すり足歩行でもないのに「なぜかよく転ぶ」というのが最大の特徴です。

注意を促しても転んでしまうのは、危険に対する認知力が低下しているためです。PSPの認知症は前頭葉障害によるものなので深刻さがなく、かわいらしい印象(餐場)を受けることが多いとされます。筆者も二度童という印象を受けています。しかし非定型例はPDに近いので、必ずしもそうではありません。

PSP患者は「歩けなくてつらい」などという悲観的な発言は聞かれず、ニコニコしています。カーテイスがPSPをPick complexに属させている理由がここにあるのでしょう。

典型例はリチャードソン症候群(Richardson syndrome)とも言われるので略号でRSと表記し、PSP-RSとは言いません。PDは喫煙しない真面目な人がなるのですが、PSPとタバコは関係がないことが疫学調査でわかっています(西宮)。

CTでは典型的なハミングバードサインです。治療はリバスタッチ4.5mg、ドパコール50mg×3、流涎にアーテン1mg×2、ロゼレム8mg、NewフェルガードLA粒タイプ×2個、グルタチオン1600mg+シチコリン250mg10日ごと、としました。
西宮 仁:進行性核上性麻痺の疫学。神経内科 56:120-124, 2002.

PSP-parkinsonism (PSP-P)
初期はまったくパーキンソン病(PD)としか見えず、PSP特有の症候もないため診断が困難なタイプです。しかしLドパの効果が2-3年で消失しPSPの症状(転倒、眼球運動障害、認知症)が揃った時点でPSPと気づかれます。

RSに比べて罹病期間が長く(平均9.1年)、死亡時年齢が高い(平均75.5歳)とされますが、歩行改善のためにいろいろな工夫が必要となります。最初はLドパに反応するためPDと同じ治療でかまいません。

改訂長谷川式スケールがおおかた25以下になるとリバスチグミン2.25-4.5mgを考慮します。パーキンソニズムがあるため理論的にはドネペジルという選択肢はないのですが、1.67mgくらいで認知機能によい影響があるなら可能と考えます。

PSP-PAGF(pure akinesia with gait freezing)
早期に歩行や発語のすくみ現象がある、Lドパが効かない、発症5年以内にはPSPらしい症状が出てこない、という第三のPSPです。

眼球運動異常が出てくるのが平均9年目と言われるように、進行が緩徐で、その理由の一つとして、運動皮質、小脳などのタウ蛋白の蓄積が軽度だからと思われます。

PSPのその他の亜系
ほかにもPSP-CBS(3%)、PSP-PNFA、PSP-FTD(4%)、PSP-Cがあります。これは、経験の少ないプライマリケア医には分類困難な領域かもしれません。PSP-Cなどは、ふつうMSA-Cと診断するのがもっともだと思うのですが、研究者の観点からはPSPの一種とされるのでしょう。

コウノメソッドの安心理論でその不安を一掃するとすれば、どのタイプの患者であっても個々の患者のグルタチオン必要量に達するまで増やしてゆけば、7割は歩行が改善できるということです。
Williams DR wt al.: Characteristics of two distinct clinical phenotypes in pathologically proven progressive supranuclear palsy: Richardson's syndrome and PSP-parkinsonism. Brain 128:1247-1258, 2005.
餐場郁子:進行性核上性麻痺。アクチュアル脳・神経疾患の臨床 パーキンソン病と運動異常。中山書店、東京、2013、p436-443。

PSPの治療
三環系抗うつ薬を推奨する医学書がありますが、その理由がまったく理解できません。むしろADLを悪化させる可能性が大きいです。好意的に考えるなら絶妙な用量設定で脳内セロトニンとドパミンがバランスを保った時だけ改善するということでしょう。

治療は、リバスチグミン4.5mg程度、陽性症状にウインタミン1日10mg程度、歩行にはグルタチオン1400mg以上(自費)が有効です。ボーとして反応の悪い患者にはニコリン500-1000mgも併用して、10日ごとに点滴しましょう。点滴できない場合はとくに、NewフェルガードLA粒タイプ2-6錠の併用が有用です。

PSPには3剤併用が必要と言う理論があります。アセチルコリン、ドパミン、ノルアドレナリンです。それぞれの推奨薬は、リバスチグミン、メネシット、ドプスです。健康食品や自費点滴ができない症例では参考にしてください。



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登場人物(平成28年11月現在)
 
佐藤リュウ(59歳)←夫
佐藤バニラ(永遠の20歳)←私
佐藤イブキ(社会人)←長男
佐藤ワタル(福祉施設通所)←次男

 夫佐藤リュウは、平成17年頃(48歳)より、物が二重に見える、手に力が入らない、全身が重苦しく感じる症状があり、会社勤務ができなくなりました。
 若年性のパーキンソン病の疑いとのことで、平成18年(49歳)より神経内科に通院し、平成19年にはパーキンソン病関連疾患と診断名が付きました。
 その後、平成22年 (52歳)、診断名が若年性の「進行性核上性麻痺」に変わりました。
 ずっと自宅より通院していましたが、平成24年4月に自宅外で転倒骨折し、手術入院となってしまいました。入院時、誤嚥性と思われる肺炎も併発していて、現在も入院中です。平成26年11月19日に胃瘻造設しました。
 夫が仕事ができなくなった平成17年時、上の子が小学校6年生、下の子が小学校2年生(多動と自閉で特別支援学級在籍)でした。
 私は、平成19年より、平日フルタイムで仕事しています。たくさんの方のお力をお借りし、生活しています。
 北海道在住です。

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